【丹羽宇一郎】「北朝鮮問題で日本は戦争に近づくことしかしていない」「尖閣問題、泥酔船長はぱっと釈放すべきだった」

北朝鮮が6回目の核実験を敢行し、アメリカは「軍事的オプション」をちらつかせる政権幹部の発言が続く。安倍政権も北朝鮮に対し、「より強い圧力をかけていく」という姿勢だ。

緊迫する国際情勢の中で、伊藤忠会長を務めた後、初の民間出身中国大使に就任した丹羽宇一郎氏は「日本がどんどん戦争に近づいている」と警告する。

2012年末に帰国後は日中友好協会会長に就任する一方、地球環境、エネルギー、安全保障、教育、教養など、中国問題に限らない幅広い言論活動を展開する丹羽氏に今の状態はどう映っているのだろうか。

?? 近著『戦争の大問題』で「日本が戦争に巻き込まれる可能性は低くない」と書いています。今の日本に戦争の危険は近づいているのでしょうか。

丹羽:今年2月ごろから戦争体験者をはじめ元防衛相や軍事評論家への取材を続けてきたんです。取材をするまではそれほど(危機感は)感じなかったのですが、戦争の本当の姿、真実を知ったのが、あの本が生まれる契機です。

最近の政治の世界を見ていると、戦争を知らない人たちが世界の政治を動かしている。日本の政権中枢には(戦争を経験した世代の)80~90代がいない。イメージできるのはせいぜい私のような70代後半以上なんです。これはまずいと。「戦争を知らない大人たち」にこそ読んでほしいと思っています。

「力対力」では戦争以外の選択肢がなくなる

来年度の防衛予算は、2017年度当初予算比2.5%増(概算要求)と膨張する一方だ。その理由は、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を意識した「島嶼(とうしょ)防衛」と、対北朝鮮の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。一基800億円のシステムを2基配備するとも伝えられる。

?? 尖閣諸島をとられたら「戦争すればいいじゃないか」などと、勇ましい言論が溢れています。北朝鮮と中国に対し強硬論が強まっています。

丹羽:安倍さんが得意な「力対力」では、やがて戦争以外の選択肢はなくなる。「出口なき戦略」は「日銀の特許」じゃないですよ。出口なき戦略は、必ず破滅的な結果をもたらす。第二次大戦がそうです。

北朝鮮問題も出口がない。金正恩朝鮮労働党委員長(33)もトランプ米大統領(71)も戦争を知りません。「団塊の世代」と話していると、戦争のことを実に知らないんです。「戦争に近づくな」と言いたいのですが、今の日本は戦争に近づくことしかしていない。北朝鮮問題でも中国に対してもね。

一方、中国は「戦争に近づくな、力と力は駄目だ」と言っています。これは清朝時代のアヘン戦争(1840~42年)以降、侵略・侵入を受け続けた歴史があり、それが語り継がれているからなんです。彼らからすれば、自衛隊はかつての日本軍に代わるもので、日本は中国を仮想敵国にしていると考えている。

アメリカは弾道ミサイル防衛システムの「THAAD」を韓国に配備したが、中国は北朝鮮向けではなく、中国向けだと受け止めています。

傲慢な5大国の「核独占」論

丹羽:北朝鮮は核を保有しないと生存が脅かされると考えている。生存するには持たざるを得ないというわけです。世界で核兵器を持っているのは、米ロ中英仏の核5大国とイスラエル、インド、パキスタン北朝鮮ですね。

核5大国は核兵器禁止条約を批准していないのに、北が核実験をすると「けしからん」と言って懲らしめる。それは納得できないでしょう。自分たち以外は一切核保有を許さないというのは、傲慢です。

(北の核保有は)良くないし、誰も弁護しないのは当然です。でも「やめろ、やめろ」と言うだけで、金正恩はやめますか? それなのにやめないからと言って「力と力」で懲らしめようとする。それを「出口なき戦略」というんです。続ければ確実に国を破滅に導く。

「出口なき戦略」を続けたら、その結果何が起きるか。まず大量の北朝鮮からの難民が中国、韓国、日本に押し寄せます。そこまで想定しているのでしょうか?

核凍結に安倍さんはトランプ氏の説得を

?? 丹羽さんは、小泉純一郎元首相の訪朝を高く評価しています。この際、安倍首相が訪朝してはという声もあります。

https://www.businessinsider.jp/post-104446

>>2以降に続く)