【米国】「韓国の歴史と文化をもっと教科書に載せてほしいです」 米教育界に浸透する韓国の「声」[9/30]

「韓国の歴史と文化をもっと教科書に載せてほしいです」。この夏、米カリフォルニア州などに住む韓国の小中高生約50人が、米国の公立学校で使用される社会科教科書の出版社6社に、こんな手紙を送った。韓国系のボランティア教師らが夏休みに主催した研修キャンプに参加した生徒・児童らだという。

送付先には、高校の世界史で慰安婦について、「日本軍が強制的に募集し、徴収し、制圧した」「天皇からの贈り物として提供した」などと表記するマグロウヒル社も含まれていた。

「載せてほしい」内容は、慰安婦の歴史のほかに、日本植民地時代と独立運動家の活躍や、独島(竹島)、朝鮮戦争(1950~53年)などで、「米国の友人たちと一緒に学びたい」としている。生徒・児童の声を出版社はどう受け止めるのだろうか。

反日教育」を米国に持ち込む韓国側の意図が透けてみえるが、「またか」と辟易(へきえき)している場合ではない。韓国側の米教育界への浸透度は相当なものだ。

韓国政府は今年7月、米国の歴史教科書や朝鮮戦争の教育資料を製作している大学教授や教師ら約30人を韓国に招待した。米国の歴史教育において多大な影響力を持つ社会科教員団体「全米社会科協議会(NCSS)」のテリー・チェリー会長も含まれていた。

関係者によれば、韓国教育省幹部はチェリー氏らとの懇談で、米教科書に韓国の歴史などの記述を増やすよう改めて要請したという。

チェリー氏の訪韓は初めてではない。4月にも韓国学中央研究院が主催した「米国の教科書専門家招請韓国文化研修」に参加した。

その研修に同行した教授2人が執筆し、来年出版される米国の高校世界史教科書「ウェイズ・オブ・ザ・ワールド」(ベッドフォード・セントマーチン社)には、韓国の文化や、政治・経済の発展など現代史がより詳しく記述されると、韓国政府は発表している。分量にして約2ページ。

これまで「日本海」表記だった地図は、「東海・日本海」併記に改められるという。

米教科書の専門家を招く研修は少なくとも6年前から続いており、韓国側と教科書執筆者、出版社のつながりが緊密になっていることは明白だ。マグロウヒル社の教科書に続き、「慰安婦」問題などで不適切な記述のある教科書や、「徴用工」問題が韓国側の都合のいいように書かれた教科書が登場する懸念は強まる。

カリフォルニア州教育委員会が昨年夏に策定した高校の歴史・社会科カリキュラム指針には、「慰安婦」問題が盛り込まれ、「性奴隷」と明記された。最初に公示された指針案が「慰安婦=性奴隷」となっていたのは、韓国系の教育関係者や児童・生徒の父母らが長年にわたって、同教育委員会に陳情などを繰り返した「成果」だった。

対する日本側は、といえば、指針策定の最終盤になって、ようやく外務省高官が秘密裏に霞が関から州都サクラメントを訪れるなどしたが、2015年12月の慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決をうたった「日韓合意」を指針に盛り込むのが精いっぱいだった。

指針は、教育内容の骨子を示すもので、まさに教科書執筆者や出版社が記述する内容を決める際に参考にするものだ。慰安婦問題は当時の日韓両政府間では決着済みでも、その歴史においては「性奴隷だった」と表記される余地は残る。指針に沿った教科書選定の作業は来春まで続くといい、韓国系の陳情は現在、水面下で活発化している。

「不適切だ」「虚偽だ」と外国政府が抗議しても、自国の教科書の内容を疑う児童・生徒はどれだけいるだろうか。だからこそ、韓国側は教科書への記述にこだわり、躍起になる。「真実」として独り歩きした内容を削除・修正するよう働きかけることの難しさは、マグロウヒル教科書問題で経験した。日本政府に危機感はあるか。(なかむら かつし)

http://www.sankei.com/column/news/170925/clm1709250005-n1.html

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セント・メリーズ公園展示スペースに設置された慰安婦像=22日、米カリフォルニア州サンフランシスコ(中村将撮影)